蕃山のつつじ

 蕃山21の会 忍頂寺晃嗣


蕃山には多くのツツジが春から秋にかけて次々に咲いていく。里山のツツジのほとんどが蕃山にはある。そう、蕃山はツツジ山なんです。一種類のツツジが山を覆っているのではなくいろんなツツジがあるんです。こんな里山は、他に知りません。「宮城の地学ガイド」(宮城県高等学校理科研究会地学部会編)によれば、蕃山は、新生代第三紀に酸性火山活動によって生まれた安山岩や凝灰岩でできた山のようです。また、ツツジは、石灰質でできた山ではなく、チャートでできた山によく生育するようです(「山の植物Ⅱ」、清水建美著:保育社)。蕃山がチャート(堆積岩の一種で熱変性した珪質岩)でできた山か安山岩や凝灰岩でできた山かどうかはわかりませんが,ツツジはどうも中性か酸性土壌を好むように思います。さて、それでは、蕃山で見ることができるツツジを紹介しましょう。その前にここで言う蕃山とは開山堂(蕃山)、西風蕃山、蛇台蕃山、萱ヶ崎山を含む標高350 m~370mほどの山塊(里山)をいい、面積はおおむね1350ヘクタールです。

1. トウゴクミツバツツジ(開花時期:4月下旬~5月上旬)

 里山で,一番最初に咲くツツジで、毎年この花がいつ咲くのかが待ち遠しい。葉が三輪生しているのでわかりやすい。花はピンクがかった紅紫色で美しく、ヤマザクラとともに春の山を彩ってくれる。冬芽は、紡錘形で基部の芽鱗に灰褐色の毛がある。(図鑑では全体に毛があることになっているが蕃山ではそのようなものは見ていない。) 蕃山ではほぼ全山で見ることができる。県内の山では、標高300 m前後から800m近くまで見ることができる。

2. シロヤシオツツジ(開花時期:5月上旬)

葉が五個輪生しており、葉の先端が丸く、縁が褐色に隈取りされているものが多い。花は白色で美しい。愛子様のお印の樹である。この樹はまたゴヨウツツジ、マツハダ(木肌がマツに似ているから)という名も持っている。冬芽は、紡錘形でトウゴクミツバツツジに似ているが、芽鱗の縁にかすかに毛があるものの基部の芽鱗には毛はない。蕃山では、開山堂から西風蕃山を経て萱ヶ崎山にかけて見られる。県内では山地上部から亜高山にかけていろんな山で見られるが、花渕山、桑沼、三方倉山などが有名。

3. ヤマツツジ(開花時期:5月上旬~下旬)

里山を代表するツツジで、県内の里山ではどこでも見ることができる。葉の表面や葉柄に毛があり,触るとザラつくので、わかりやすい。

花は、明るいピンクがかったオレンジ色から、赤みを帯びたオレンジ色まで場所により微妙な違いがある。冬芽は越冬葉に囲まれている場合が多く、芽鱗には褐色の伏した毛が密生する。県内では、低山から亜高山まで幅広く見ることができるが、徳仙丈山や田束山のヤマツツジが有名である。

4. サラサドウダン(開花時期:5月上旬~中旬)

ドウダンツツジの仲間で、総状花序は垂れ下がり、鐘形の花を付け、花冠(花びら)に赤い縦筋が入っていて、それが更紗模様に似ているからと言われている。蕃山では、53番鉄塔の近くにある。冬芽は、卵形か広卵形で先端は丸いかややとがる。側芽は発達しない。山地上部から亜高山にかけて見ることができるが、蔵王青少年野営場近くのドウダンの森や泉ヶ岳表コースのサラサドウダンがよく知られている。シロヤシオツツジと同様、標高300 mを少し越える程度の山で見られるのは珍しい。(実は、ふれあいの森にもある。ふれあいの森のような低山にあるのは本当に珍しい。)

5. アブラツツジ(開花時期:5月中旬~下旬)

ドウダンツツジの仲間であるが、葉の裏が油を塗ったように光っているのでこの名が付けられた。総状花序が垂れ下がってつき、白い壺形の花を下向きに数個つける。冬芽は、小さい紡錘形で赤色か赤褐色で光沢があり美しい。冬芽は、里山のツツジの中で一番小さい。

 蕃山ではいろんなところで見ることができるが、開山堂から西風蕃山にかけての稜線やそこに至る北側からのコースに多く見られる。

このツツジは標高500m前後までの山で見ることができるが、なぜか、県北の山ではほとんど見られない。なお、「大鷹沢の植物誌」(上野雄規著)によれば、仙台より東の牡鹿半島や北上山地、及び栗駒山周辺からはまだ見つかっていない(1974年現在)そうである。

6. レンゲツツジ(開花時期:5月中旬)

 葉は鮮やかな緑色でヤマツツジより一回り大きく、葉の表面に独特のしわがあるので、他のツツジと区別が付きやすい。ツツジの中で一番大きい花を咲かす。花の色はオレンジ色がほとんどで、ところにより黄色のものもある。冬芽は、長卵形で濃赤褐色をしており芽鱗の縁に白い毛がある。花芽が枝の先端につき特に大きい。蕃山では、ほとんど見ることができないが、ビオトープから昆虫の森を通って見晴台に行くコース(山岸コース)にあり、花はオレンジ色である。このツツジは陽当たりの良い少し湿った草原のようなところを好むように思うが、蕃山ではそのようなところがなく、今生育しているところも昔は明るい日射しが入っていたのだろうが、雑木を採らなくなったためか、木が大きくなり林内が薄暗くなってしまい、レンゲツツジにとっては住みづらい環境に変わってしまった。蕃山からレンゲツツジがなくなってしまうのか心配である。なお、このツツジには毒があるので、蜜を吸わないように注意したい。

7. バイカツツジ(開花時期:6月中旬)

アブラツツジより少し遅れて咲くツツジで、梅の花に似た白い花を下向きに付ける。花びらの一部(上側の裂片)に紫紅色の斑点が付いている。葉は、枝先に集まってつき、平に開き、葉の表面は少し凹凸があり、また光沢があるので、なれればすぐに分かる。冬芽は、紡錘形で、同じ程度の大きさの頂芽と側芽を枝先にまとまって付ける。蕃山では、ヤマツツジやアブラツツジと同様いろいろなコースで見ることができる。

8. ホツツジ(開花時期:8月中旬~9月上旬)

里山のツツジの中で、一番遅く咲く。枝先に円錐花序をまっすぐ上向きに出す。花は、つぼみの時は少しピンク色がかっているが、咲くと真っ白になる。めしべが長く突き出ているのが特徴である。葉は、枝先に数枚集まってつき、紡錘形で、縁が少し波打っている。

1年枝(今年出た枝)は、茶褐色で三角柱状をしているので、触ればすぐに分かる。冬芽は、濃褐色、長卵形で先はとがる。蕃山では、いろいろなコースで見ることができるが、黒滝コースと茂庭からの山の神コースで多く見ることができる。